ある施設団が、食料支援を求めて魔王の城へ赴いた。
目的は交渉。ただ一つ――生き延びるための糧を得ること。
だが、交渉は難航する。
魔王は高条件を提示し、決して譲らない。
それも無理はなかった。
軽々しく食料を与えれば、他国との均衡が崩れ、自国にも災いが及ぶ。
加えて、返済の見込みがない相手に貸す理由など、どこにもない。
魔王は人間を見下していた。
目の前の施設団もまた、取るに足らない存在としか映っていない。
やがて、帰ろうとしない彼らに苛立ちを覚えた魔王は、嘲りを含んだ問いを投げかける。
「お前たちは、特別な力を持つと聞いたが――本当か?」
その言葉に、施設団の空気が張り詰める。
誇りを踏みにじられたのだ。
「……そのような理由ではありません」
それは、数多の訓練と犠牲の末にようやく得た力。
軽々しく語られるものではない。
しかし魔王は笑う。
「ならば神にでも縋ればいい。
目の前の敵に頭を下げるより、よほど気が楽だろう」
――その時、一人の従者が口を開いた。
「神を笑うのに、なぜあなたは神のように振る舞うのですか」
魔王の表情が、わずかに止まる。
だがすぐに聞こえぬふりをし、問い返す。
従者は退かない。
「都合の悪い言葉だけ、聞こえないのですか」
周囲の空気が一変する。
魔王の怒りが静かに滲み出る。
剣が抜かれ、従者の首元へと突きつけられる。
「もう一度言ってみろ」
だが従者の目は揺るがない。
「答えられないのなら、認めたということでよろしいのですか」
その言葉に、魔王の手が一瞬止まる。
やがて剣は収められた。
魔王は高らかに笑い、態度を一転させる。
「なるほど、面白い」
そして語り出す。
「これは単なる気まぐれではない。
食料は我のものではない。作っているのは部下たちだ。
彼らを納得させるだけの理由が必要でな」
一拍置き、さらに続ける。
「それに――」
魔王は従者を見据え、口元に笑みを浮かべる。
「その態度は、物を借りに来る者のものか?」
従者は言葉を失う。
魔王は内心で嗤った。
命を懸ける覚悟はある。だが、足元の礼節には答えられない。
――面白い人間たちだ。
「さて、続きを始めよう」
魔王は部下に命じる。
客人として席と食事を用意させる。
こうして、ようやく“本当の交渉”が幕を開けた。
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